よくある質問
歴史
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従来は約440万年前のラミダス猿人の化石が最古とされてきましたが、2001年にチャドで発見された約700万年前の猿人、トゥーマイ猿人の存在が学界で認められるようになってきました。そのため、平成25年度版教科書より、新しい学説に合わせて修正しています。なお、「トゥーマイ」とは、現地語で「生命の希望」を意味するそうです。また、ケニアでは約600万年前の猿人とされる「オロリン=トゥゲネンシス」が発見されるなど、新たな化石人類の発見が相次いでいます。
人類の直立二足歩行は、アフリカのサバンナ(草原)で生活していくための適応の結果として、直射日光を浴びにくく、周囲を見わたしやすく、高い位置にある食物に手が届くようになるために変化していった、などと考えられてきました。しかし、近年発見されている人類の化石は、いずれも比較的湿潤な森林地帯で生活していたことが確認されていて、従来の説を考え直すように迫られています。
また、人類の起源はアフリカ大地溝帯の東側といわれてきましたが、そこから2500km以上離れたチャドでこのような発見があったことで、仮説を根底からくつがえす結果になりました。なお、トゥーマイ猿人の腰や足の骨は報告されていないため、確実に直立二足歩行をしていたかどうかは確認されていません。また、年代の測定法にも異論が唱えられており、議論の余地はまだ残されています。
日露和親条約が結ばれたのは、安政元年12月21日です。歴史学では慣例として、安政元年を1854年として表記してきました。しかし、安政元年12月21日を厳密に西暦に換算すると1855年2月7日になります。2013年に文部科学省が策定した「教科書改革実行プラン」に基づき、「教科用図書検定調査審議会」が了承した教科書記述の検定基準の改正案では「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高裁判所の判例が存在する場合には、それらに基づいた記述がされていること」となりました。こうしたことからも、弊社では、条約の日付や名称は外務省の表記に統一するようにしております。外務省では、条約の調印は、相手国との共通の日付の確認が重要であるため、外交の基準である西暦の表記で統一しています。また、条約名も、日魯通好条約(日露和親条約)と表記しています。そのため、この表記に統一しています。ただし、「魯」の文字は、義務教育においては基本的に使用しませんので、「露」の文字を使用して、日露通好条約と表記しています。同様に、1895年の下関条約も、外務省では、日清講和条約という表記が優先して使われていることから、こちらも日清講和条約(下関条約)と表記しています。
「大阪」は、もともと近世までは、「大坂」と表記されていましたが、「坂」の文字は「土に返る」という意味にも取れ、縁起が悪いという理由から、明治5年に「大阪」と書かれるようになったといわれています。弊社の「阪」と「坂」の使い分けは、中学校の教科書・教材では時代を通して「阪」を使い、高等学校の教科書・教材では近世までは「坂」を使用することで統一しています。
このような使い分けがされるようになったのは、中学生にとって「阪」と「坂」の漢字の変化を理解することは難しく、混乱をきたすおそれがあることが理由です。そのため、学習する過程で理解をはばむことがないよう表記を統一しています。また、「函館」も同様に、中学校では統一して「函館」、高等学校では近世までを「箱館」その後は「函館」と使い分けています。このような表記の方針は、学習上の配慮としてご理解いただきたく存じます。
弊社の教科書が「絶対王政」の用語を使用していない理由は、歴史学界の通説の変化に基づくためです。近年の研究成果により、この時代は「絶対王政」という言葉が示すほどには現実の王権が「絶対的」でなかったことが分かってきました。また、実際には伝統的な自治権を保証された地域や団体が多数存続していたことも明らかになってきています。さらには、この時代の研究視点にも変化があり、世界史全体からみてこの時代を近代的な国家の出発点ととらえることが強調されるようになってきました。そのため、王を主権者とする「主権国家」が発生した時代という評価に変わってきています。こうしたことから、近年「絶対王政」という用語も使用されなくなってきています。
なお、高等学校の世界史教科書では、「絶対王政」の用語の表記はほとんどなくなっています。
「産業革命」という概念は、19世紀末に登場してきました。その概念は、機械と動力を用いる工場制度の導入により、雇用関係が激変し、その結果として民衆の生活水準が低下し、多くの社会問題が発生したというものでした。この劇的な変化を指して「革命」という言葉が使われました。しかし、1920年代にはこの概念に疑問を持つ声が世界各地の学界ではあがっており、議論が続いていたようです。一方で、日本の歴史学界は、マルクスの唱えた歴史の発展段階を考える「唯物史観」とともに「産業革命」の概念を支持してきました。冷戦が終わり、「唯物史観」の見直しが進むようになってからは、日本の学者の中からも改めてイギリスの「産業革命」の概念を、日本の歴史に当てはめることについて考え直す声が高まってきています。そのため「工業化」という用語のみで工業社会への変化を説明しようとする動きもあり、歴史の学術書では「産業革命」という表記に変わり、「工業化」という表記を使うことも増えてきています。
こうした背景を受け、弊社では著者とも検討をした結果、「産業革命」という用語自体は使い続けるものの極力少なくし、「工業化」という工業比重の上昇の説明で済むところについては「工業化」と表記することにしています。
文部科学省の国語審議会が発表した「外来語の表記」においては"Lincoln"は「リンカーン」と表記することが定められています。これを踏まえて多くは「リンカーン」と書き表します。ただし、この「外来語の表記」は、その他の書き方を否定するものではなく、必ずこれに従うべきものではない、との細則があります。
弊社では、グローバル化が急速に進展している現状を踏まえ、できる限り現地の読み方に近い表現で外来語を書き表しています。"Lincoln"は発音記号では"lˈɪŋkən"と表されることから、弊社では「リンカン」を日本語読みとして使用しています。
なお、現在発刊されている高等学校の世界史教科書でも、弊社を含めほぼ「リンカン」で表記統一されており、また中学校の歴史教科書においても、弊社だけでなく他社でも「リンカン」と記載している出版社があります。
ローズヴェルト(Roosevelt)の先祖は、17世紀にアメリカ合衆国に移住したオランダ系移民であったといわれます。"roo"という英語の綴りは、room(ルーム、部屋)、roof(ルーフ、屋根)のように「ルー」と発音されることが多いようですが、オランダ語ではこの綴りは「ロー」と発音されます。
弊社では、原則として人名・地名は現地語表記を使用していますが、アメリカ合衆国のような移民社会で、人名を現地語の英語風に表記するか、故国の言語風に表記するのかは難しい問題です。
近年、世界史の研究書や辞典類では、「ローズヴェルト」と表記するものが多く、今後こちらの表記が主流になるものと判断して、弊社もこちらの表記を採用しています。ただし、義務教育においては、「ヴ」の表記は基本的に使用いたしませんので、「ローズベルト」と表記しています。
なお、高等学校の世界史教科書では、ほとんどが「ローズヴェルト」と表記されています。