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古代の蝦夷(えみし)とアイヌはどのような関係にあるのですか。アイヌの祖先は蝦夷なのですか。
「古代の蝦夷(えみし)がアイヌそのものである」、あるいは「蝦夷のすべてがアイヌの祖先である」とするのは、論争中ではあるものの、現在の研究ではほぼ否定されつつあります。
奈良時代に「蝦夷(えみし)」と呼ばれた人々は、東北に住んで、中央と著しく生活・文化様式が異なる人々のことであり、本来は人種的な区別をもたない、きわめて文化的・政治的な概念でした。この意味では「蝦夷」にアイヌも含まれると考えられます。しかし、「蝦夷それ自身がアイヌである」、あるいは「蝦夷のすべてがアイヌの祖先である」と断定できるだけの証拠もありません。
やがて、「蝦夷(えみし)」の中でも律令国家の支配がついに及ばなかった、東北北部から北海道にかけての蝦夷が、北方の蝦夷として特別視され、平安中期以降には、これが「蝦夷(えぞ)」とよばれるようになりました。現在では、蝦夷が「えぞ」とよばれるようになったころから、「蝦夷」がアイヌを指すようになったと見るのが通説のようです。ちなみに、アイヌと思われる「蝦夷」を記した初見は、1356年成立の『諏訪大明神絵詞』にあるとされています。 このように「蝦夷(えぞ)=アイヌ」は中世・近世に通用した概念で、これを古代蝦夷(えみし)にも当てはめるのは正確ではありません。