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「造山帯」と鉱産資源を関連させて解説しているのはなぜですか。

 石油の埋蔵量は新期造山帯に多く、とくに新生代の比較的若い地層中におよそ6割が埋蔵されているというのが、現在の一般的な見解であり、多くの自然科学研究者に支持されている『The Dynamic Earth: An Introduction to Physical Geology』(by Brian J. Skinner,Stephen C.Porter,Jefferey Park Paperback,p.648)にもこのことが示されています。石油や天然ガスなどの流体は一か所にとどまりにくいため、新しく形成された背斜にとどまる確率が高くなります。この背斜が新期造山帯に多いため、石油は新期造山帯で多く産出されます。例えば、新期造山帯に位置するイランやインドネシアはいずれも世界有数の産油国です。また、ベネズエラのマラカイボ湖周辺も世界有数の油田地帯ですが、プレート境界にとりかこまれており、この一帯も新期造山帯に属する地域であるといえます。
 一方で、ロシアのチュメニ油田やその周辺のように、地層の変形や侵食が進まない安定した地域では、石油が古い岩体内にとどまる場合があります。また、近年になって開発が行われるようになったシェールオイルやシェールガスのように、流体の自由度が低い状態で古いシェール(頁岩)中にとどまっている石油や天然ガスも存在します。このように新期造山帯は石油が採掘される代表的な場所ではありますが、唯一の場所ではないことには留意を要します。
 また、古生代の地層には、この時期に繁栄したシダ植物の森林の遺骸が炭化して形成された石炭層がみられます。古期造山帯では、長年にわたり侵食を受けた結果この石炭層が露出している場所が多いため、露天掘りの炭鉱が多いのです。
 弊社の教科書・教材では、より信頼性の高い見解や事実にもとづきながら、体系的な学習ができるよう考慮し、造山帯の分布とその地域の代表的な鉱産資源を関連させて解説しています。石油や石炭の生成要件や埋蔵場所などは現在の研究でも明らかになっていないこともあるため、今後も最新の研究動向を注視して、より適切でわかりやすい構成・記述を追究して参ります。