〈写真・文 帝国書院 取材班〉
 
 ホースシーフキャニオン    フードゥー
 
 ホースシューキャニオン    ルイーズ湖とヴィクトリア山
 
 ルイーズ湖と高級リゾートホテル    ハイウェイにかかる動物専用の橋
 
 サルファー山から見たバンフの街なみ    カナダとアメリカ合衆国間の直線状の国境
 
 取材班(空撮ヘリのパイロットと)    
 2015年9月10日,私たち取材班の4名はモントリオールでの二言語社会のようすとフォートマクマレーでのオイルサンド設備の取材を終えて,侵食地形とバンフ国立公園の取材を行うためにカルガリー空港に降り立った。カルガリーは人口約110万,トロント,モントリオールに次ぐカナダ第3の都市で(2011年),1988年の冬季オリンピック開催地として知られている。
 写真①〜③は,カルガリーの市街地から車で約2時間北東へ走ると現れる,ドラムへラー周辺の侵食地形である。この約2時間の車旅というのは,カーナビの画面表示が「100km先を右,30km直進」というような具合で,日本とはまったく異なるスケール感であった。こうしてどこまでも永遠に続くかのように思われた小麦畑とキャノーラ畑の間を走って行くと,突如として写真①のような侵食地形が現れる。この景色の急激な変化に取材班はとても驚いた。写真①はホースシーフキャニオン,②はフードゥー,③はホースシューキャニオンで,観光地となっている。ドラムヘラー周辺には,氷河と中心を流れるレッドディア川による侵食地形が広がっており,地層の美しいしま模様とその広大な景観に圧倒された。また,この一帯は恐竜の化石が多く発掘されることでも有名で,ロイヤル・ティレル博物館では数多くの標本が展示されている。
 翌日,再びカルガリーから車を走らせ,バンフ国立公園へ向かった。写真④〜⑤は,カナディアンロッキーのなかでも,年間100万人をこえる観光客が訪れるルイーズ湖(写真④はルイーズ湖越しにヴィクトリア氷河をのぞんだもの。写真⑤はヴィクトリア氷河側からルイーズ湖越しに高級リゾートホテルをのぞんだもの)。ルイーズ湖はヴィクトリア氷河の侵食によって形成された氷河湖で,氷河湖特有の青緑色の湖水が広がる。ヴィクトリア山と氷河が湖水に映え,その美しい風景が多くの観光客を魅了していた。また,湖一帯ではハイキングやカヌーなど手軽に楽しめるレジャーのほか,そびえたつ絶壁にいどむロッククライマーなども数多く見られた。
 写真⑥は,トランスカナダハイウェイにかかる動物専用の橋(アニマルオーバーパス)。国立公園の中を走るトランスカナダハイウェイのおかげで,交通の便はよくなったものの,野生動物との接触事故やその行動範囲を制限することが問題となり建設された。このほかにも,道路の下を通すアンダーパスも多数あり,野生動物との共存を第一としている。
 写真⑦は,バンフ郊外のサルファー山(標高約2300m)から見たバンフ(標高約1400m)の街なみ。ゴンドラに乗って山頂に着き,けわしいロッキーの山々,山頂付近の氷河地形,どこまでも広がる針葉樹林帯など,バンフの街を取り囲む大パノラマは圧巻の一言であった。バンフはカナディアンロッキー観光の拠点の一つで,大勢の観光客でにぎわいを見せていた。日本人観光客も多く,シルバー世代のツアーとも数多く遭遇した。街の規模は思っていたほど大きくなく,長野県の軽井沢に似た雰囲気を感じた。雄大な自然と親しみやすい街なみに接して,カナディアンロッキー観光が多くの人々を魅了する理由の一端を感じた。
 写真⑧は,ヴァンクーヴァー市内から1時間ほどのところにあるピットメドウズ空港からヘリコプターで飛び立ち,アボッツフォード郊外のアーノルド付近でカナダとアメリカ合衆国間の国境を空撮したものである。向かって左がカナダ,右がアメリカ合衆国である。カナダとアメリカ合衆国間の国境は北緯49度線に沿った直線状の国境の例として有名で,平地部分ではその形状があまりわからないが,山地など森林がある箇所では,国境の部分だけ森林が伐採されており,直線状の形状がよくわかる。
 今回の取材では,日本とはスケールのまったく異なる自然を肌で感じることができた。また,雄大な自然を観光資源として利用し開発・整備を進める一方で,将来を見すえて自然との共存を第一に考える姿勢を強く感じた取材であった。
カナダ地図