2024年8月8日 TOPPAN小石川本社ビル 会議室
後援:株式会社帝国書院、TOPPANホールディングス株式会社
TOPPAN小石川本社ビルで開催された「192Cafe meet デジタル地図帳」は、
デジタル地図帳を活用した授業アイデアを考え共有するイベント。
私立・公立小学校から参加した約30名の先生が教材研究をし、
それを経て生まれた授業アイデアをグループで話し合い、発表、共有し合いました。
すぐに実践できそうな活用術から改善のアイデアまで、
ICT教育や地図教育への熱い思いで先生どうしがつながる1日となりました。
私立小学校の先生たちを中心としたコミュニティ。「教育×ICT」をテーマに、学校、教科間の壁を越えて「未来の学び」について考える情報共有の場として、さまざまなイベントやセミナー、研究会などを開催しています。
01 活用事例&機能紹介
イベント冒頭、「デジタル地図帳ってこんなふうに使えるんだなというのを持ち帰ってもらって、周りの先生や勤務先の学校に共有し、さらには保護者にも広めてほしい」と語った192Cafe事務局の為田さん。
これまでさまざまなイベントを開催してきた192Cafeですが、ワントピックでの開催は初の試み。企業コラボの第1回として取り上げた「デジタル地図帳」に対し、時間をかけていろんな機能をたくさん使ってほしいという思いを「いじり倒してください」という表現で呼びかけました。
また、学習者用デジタル教科書を使った授業事例として、デジタル教科書プラットフォーム「EduHub(※)」で為田さん自身が執筆した東京学芸大学附属小金井小学校と成城学園初等学校の授業レポートをもとに、「レイヤー切り替え」や「まっぴん」などデジタル地図帳の機能を紹介しました。
為田さんは、「デジタル地図帳は、紙の地図帳がただデジタル表示されたものと思う方が多いんですが、そうではない」と言います。「情報の量を子どもの理解や発達段階に応じてコントロールしたり、アンケートをとって子どもたちの回答を地図やランキングに反映するツールがあったり、学校現場で使うことに特化して作られています。学校によって、子どもたちの様子も学力も必要な授業も違う。だからこそ、同じ機能でもどういうふうにどんな目的で使うのか、先生一人一人が子どもたちの反応を見ながら有機的に活用できるものだと思います」と、これから教材研究に入る先生たちに向け、教育現場におけるデジタル地図帳導入の意義を強調しました。
デジタル教科書を起点として学びの可能性を広げることを目的とした教科書ポータル。TOPPANホールディングス株式会社、BPS株式会社、株式会社Lentrance、東京書籍株式会社、株式会社帝国書院、株式会社新興出版社啓林館の6社による「一般社団法人 こども未来教育協議会」が運営。 https://eduh.jp/
02 みんなで一緒にわいわい教材研究 with 帝国書院
デジタル地図帳を使ったことが「ある」という先生は約30名の参加者中、2名のみ。ほとんどが「初めて触る」という状況のなかで教材研究タイムが始まりました。
先生たちが教材研究にじっくり取り組めるように、今回は参加人数分のデジタル地図帳のアカウントを用意。最初はやや緊張気味の会場内でしたが、実際にデジタル地図帳を使っていくにつれ、「この機能はすごい!」といった声や、テーブルに同席した先生どうしの意見交換などが活発になり、徐々に熱気が高まっていくのが感じられました。
「この機能はどうなってるの?」「こういうことはできないの?」と、サポートする帝国書院スタッフへの質問も盛んに飛びました。
03 教材研究を経て生まれた授業アイデアの共有
じっくりとデジタル地図帳の機能を使ってみた後は、先生それぞれが感じた「授業アイデア」「イチオシ機能」「改善アイデア」を発表。
全員の意見を発表するには時間に制約があったため、オンライン掲示板アプリ「Padlet」を活用しました。3つに色分けしたカテゴリごとのカードがリアルタイムで更新され、「雨温図クイズ大会」といった面白そうな授業アイデアには「いいね」がついたり、共感できる改善案には「同感です!」のコメントがついたり。反響がその場で共有されていく様子はワクワクするひとときでした。
04 アイデアをもとにグループディスカッション&成果の共有
Padletで共有された内容から、「レイヤー切り替え」「距離計測」「統計資料」にテーマを絞り、テーマごとに分かれてのグループディスカッションに移りました。
各テーブルでは、教材研究タイムに比べて、機能だけでなく地図や統計資料などの教材に関する意見や議論も白熱。それぞれの知見を集めた、デジタル地図帳ならではの授業アイデアがまとまるなか、「こういうのがやりたい」「この図版を2つ並べるにはどうすればいいの?」といった帝国書院スタッフへの質問も一歩踏み込んだものになっていました。
グループディスカッション後に発表された授業アイデアには、先生それぞれの視点や学びの状況を踏まえた、たくさんの気づきが。また今後、理想とする授業を実現するためにデジタル地図帳へどのようなことを要望したいかという視点でも多くのトピックが挙げられました。
帝国書院の担当者からは、「デジタルだからこそできる、を突き詰めるのが僕らのテーマ」としながら、「統計資料」での改善案をその場で採用したり、外部のデジタル地図との連携により身近な地域の学習へつなげる展望を述べたりと、デジタル地図帳を通じてやれること・やりたいことが熱く語られました。その話を熱心に聞き入る先生たちの姿からも、教育現場におけるデジタルコンテンツへの大きな期待を感じることができました。
Padletを使って共有された多くのアイデアや意見から、
一部を紹介します。
発表のPOINT
ピンチインしていくと自動的にWebの地図に切り替わったり、ピンチアウトすると帝国書院の地図に戻ったりできると防災や身近な地域の学習につながると思うので、今後、身近な地域の地図との連携はしっかりやりたいですね。
発表のPOINT
他教科との連携を意識しているので、同心円や自由曲線の距離計測などの機能が増えました。やはり、24時間でどこまで歩けるか、というような距離感がつかめることは大事にしています。
発表のPOINT
統計資料の地図化・グラフ化といった、デジタルだからこそできることは突き詰めたいと思っています。また、上位があれば下位がある、その因果関係は必ずあるので、ぜひやりたいですね。
学年や発達段階によって変えられるところがいいな
日本女子大学附属豊明小学校 齋藤華子先生
地図帳は子どもの頃から大好き。帝国書院のB5版の時から使っていました。 今日は、デジタルのいいところを見つけたいなと思って参加しました。
紙の地図帳は情報量が多いけれど、 デジタルの地図帳は情報を絞れる。だから、子どもに見せたい情報と自分で発見させたい情報を段階的に選ぶことができますよね。子どもの学年や発達段階によって自由に変えられるところがいいなと思いました。
どの機能も楽しくて、地理以外の授業で使うことを考えると、雨温図は、4年生の算数で棒グラフや折れ線グラフを学ぶ時に使えるかな。6年生になると地図帳を使わなくなりがちなので、例えば歴史で、江戸時代の藩が参勤交代で行くルートを選べたりとかにもよさそうです。もし、6年生を担当することになったらそういった使い方もしてみたいですね。
機能がたくさんあっていろいろできるんだなって
横浜市立西柴小学校 植野鐘太先生
実は、学校でデジタル教科書の設定まではしましたが、使う機会がなかったんです。今日、改めて子どもの立場になって使ってみて、デジタル地図帳ってこんなに機能があってたくさんのことができるんだなって、体験できて良かったです。
統計資料のランキングで上位5位の都道府県が地図上に表示されますが、それを子どもたちに投げかけて、どんなベスト5があるのかを一緒に調べてみるといった使い方も面白そうです。この時にもっと、土地利用の様子が分かる図と降水量の変化などの統計資料を重ねることができたら、上位になっている要因の読み取りなどが深まりそうですよね。さらに3Dで可視化できれば、子どもたちが積極的に学習に取り組んでいけるのかなと感じました。
選ぶことができるのはすごく素晴らしいと思います
練馬区立大泉第四小学校 内海孝亮先生
レイヤーを一から選ぶことができるのが素晴らしいですね。例えば「道路から見つけてみよう」「先生、自分は農産物や工業に興味があるよ」「じゃあそこからやってみよう」と、子どもたちの反応を見ながら選ぶことができる。選べる方が、子どもの関心や意欲を高められるし、子ども自身で学びを決めていくことにつながります。非常に有効活用できると思いました。また、他校の先生方との交流のなかで、発想の違いや新しい知識を見つけられて、とても面白かったです。
子どもの頃から見ている地図帳の絵が、デジタルによってここまで動くというのは、本当に驚きでした。うちの子どもがバス旅好きで、分からないことがあると地図帳を出してくるんですが、実際に体験してみて、自分の体験と地図との整合性というのが改めて気づきになりましたね。
届けたい情報を効果的・効率的に渡せそうですね
戸田市立芦原小学校 若林広泰先生
今まで地図帳というと紙だったので、雨温図を並べるとか情報を階層的に見られるとか、印象的で楽しいと感じました。
授業での活用には、レイヤー機能がすごく効果的だなと。子どもたちが紙の地図帳を使う時、何ページのここですとか、指示を何回かに分けて進めないと子どもたちに情報が届かないことがあります。でもデジタル地図帳なら、情報を効果的・効率的に渡すことができそうですよね。
情報がたくさん載っていて、さらに視覚的に分かりやすく整理されているので、雨の日の休み時間などにデジタル地図帳を触る子どもたちが増えるといいなと思います。手軽な操作でクイズに答えるようなコンテンツがあると、低学年の子どもたちの事前学習としても良さそうだなと思いました。