今回は,『地理・地図資料』1学期号から始まりました新コーナー「潜入!キラリかがやく!地理のお仕事図鑑」の番外編として,帝国書院の地図帳づくりのお仕事に潜入します。登場するキラリかがやくお仕事人は,文部科学省検定教科書である地図帳の編集にたずさわる小松崎 厚さん。小松崎さんは大学で地理学を専攻しました。地理のおもしろさ,お仕事に地理がどんなふうに生かされているのか,そして地図帳づくりのコダワリについて,お話をうかがいました。 |
2003年,文学部地理学科を卒業後,帝国書院に入社。文部科学省検定教科書である小・中・高等学校の地図帳の編集を手がける。 |
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地理学科に進んだ理由は- 幼稚園くらいのときに家のまわりのイラスト地図を自分で描いていたのが最初の地図との出会いです。小学生くらいになると,家のまわりを自転車で探検するようになり,身のまわりの知らないことを発見することに興味をもち始めました。 小・中・高校と社会科は好きでしたが,自然科学など理系の内容にも興味がありました。学校では,理系・文系ときっぱりわけられてしまいますが,理系的なことも文系的なことも両方学べるということに魅力を感じ,文学部地理学科に進みました。もともと地図が好きだったこと,地理のもつ幅広さにひかれたというのが,地理学科に進んだ理由です。 大学では,街なみ保存や環境問題を地域住民がどう考えていくかをテーマにしたゼミに所属しました。卒業論文では,身近な地域の環境保全を目的とした地域住民の活動が環境問題の改善にどのように寄与していくのか,アンケート調査を行いました。大学生活自体は,体育会ワンダーフォーゲル部に所属し,山で大半を過ごしましたね。 帝国書院に入社した理由は- 地理を生かせる仕事がいいなと思っていました。教職課程もとっていたので,学校の先生もいいなと思っていたのですが,倍率が高くてこのままでは受かりそうにもなく,地理と教育を生かせるのはやはり教科書かなと思ったのです。 地理は地図帳編集というお仕事でどのように生かされていますか- もちろん,地名や位置関係,空間的な感覚がある程度頭に入っていることによって,校正するときにこの都市はここでいいのかな,などを確認するために役だっています。図取りを考えるうえでも,地理ではこの地域のつながりを学習するからこの地域までは入れようとか,この地名は小さいけれど,学習のうえでは重要だから切れないように入れよう,というようにページの目的に沿った図取りを考えるのに生かされていますね。 また,各地域の最新情報にアンテナをはっていることが,新しい地域主題図をつくる際のベースとなっているんじゃないかとも思っています。日頃から,世界の動向をふまえて,次はどんな地図をつくろうか,というインスピレーションを引き出すのにも役にたっていますね。新しいものをすぐに取り入れられるよう,つねにアンテナをはって地図帳に反映できることも,地理をやってきたからだと思います。 地理をやっていてよかったことは- 登山が趣味なので,山に行くときは地形図を読図してコースを決めたり,天気図を描いて天候を判断して行動したりするなど,地理で学んだことが生かされていると思います。 また,出張や旅行でいろいろなところに行くと,ついつい何でこうなっているんだろうと疑問に思って調べてみたり,その地域の特殊性やほかの地域との共通性を考えたり,まわりをきょろきょろしながらそんなことを考えています(笑)。地域を知ることはほんとうに楽しいので,地理を学んでいてよかったと思っていますね。 ズバリ!地理のおもしろさは- 地理の魅力は幅の広さだと思います。考え方の面でもそうで,一つのことだけを考えるのではなくて,地形や産業やら文化やら,いろんなことを総合的に考えて見ていく。そういう見方・考え方というのは,生きる力というか人生のうえでもプラスになるのではないでしょうか。 高校生へのメッセージ 自分が地理学科を受けるときに,まわりに「文学部の地理学科に行ったって就職先がないんじゃないか」とか「そこで学んで何になるんだ」と言う人もいました。でも,地理が就職に不利なんていうことはないと思うんですよね。私の地理学科時代の友人も教員や塾の先生,飲料メーカーや印刷会社などさまざまな進路で活躍しています。地理は広い視野を身につけられますから,社会に出てからも十分活躍できると思います。 多少なりとも地理に興味があるのであれば,私としては,周囲に流されずに地理学科に進んで,地理の楽しさを知ってほしいなと思いますね。 |
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