〈帝国書院 取材班〉
●バンガロール市内 動画1
 到着前までは,バンガロールは「ICT産業が集積し,高地にあるため過ごしやすい気候で『ガーデンシティ』ともよばれる緑の多い都市」という認識だったが,空港を出て私たちがまず眼にしたのは車であふれそうな道路,絶えまない車のクラクション,工事現場と土くれ,人々の雑踏,街のいたるところにいる野良犬だった。これらは,ほかのインドの都市にも共通するのだろう。
 原宿にあるようなかわいらしい雑貨の店がある,とガイドさんに案内された繁華街では,さまざまな商店が連なり,たくさんの買い物客が行きかっていた。日本でインド人をイメージするターバンをまとった人(シク教徒)はほとんどおらず,黒一色の服装で全身を覆ったムスリムの女性がいた。また欧米化が進んだ土地柄のためか,サリーではなくTシャツにジーンズ姿の女性もみられた。
動画1

●ナンディ寺院(ブル寺院)
 バンガロール市内にあるナンディ寺院はヒンドゥー教の寺で,黒い石でつくられた巨大な牝牛(ブル)像(写真写真1)があり,人々の信仰を集めている。寺院の周辺は,東京の浅草のようにみやげ物屋や飲食店が集まっており,とてもにぎやかだ。牛も普通に街中を闊歩していて(写真写真2),その近くを通るのが少し怖かった。インドやスリランカで訪れた他の寺院と同様に,境内とその周辺では参拝者は履き物を脱いで裸足で歩く。衛生面から裸足になるのはちょっと思い切りが必要だったが,地面はきれいに掃き清められていて安全だった。ヒンドゥー教寺院に特徴的な大きな塔門を過ぎると,牝牛像をまつった建物があり,参拝者は像の周囲を祈りながらまわるようになっている。途中で額に赤い印(ビンディ)をつけてもらい,一同はインドに来たことを実感した(写真写真3)。
巨大な牡牛(ブル)像   放し飼いにされている牛
写真1 巨大な牡牛(ブル)像   写真2 街中を闊歩する牛
ビンディをつけた取材班    
写真3 ビンディをつけてもらった取材班    

●まゆの市場
 インドでは,サリーなどの絹織物の材料として生糸の生産がさかんで,海外にも輸出されている。生糸の原料となる,バンガロール郊外のまゆの市場(写真写真4)を見学した。広い部屋に真っ白なまゆが山盛りになった大きな台がいくつも置かれていて,ここでまゆの競りが行われるという(写真写真5)。見た目に違いはわからないが,さまざまな種類・等級があるのだろう。バンガロール近郊の農家では,JICAの協力で日本のすぐれた技術をいかした品質のよいまゆが生産されている。この市場の運営も,JICAの支援を受けているという。
まゆの市場   山盛りのまゆ
写真4 まゆの市場   写真5 山盛りのまゆ

●チェンナイのバザール 動画2
 チェンナイはバンガロールの約300km東にあるが,海に面した古い町並みは空が広く,港町独特の開放的な雰囲気がある。旧市街地には,紙製品,布製品など商品ごとに区域が分かれた活気あるバザールがあった。迷路のように細い路地を進むと,両側にはさまざまな店が連なり,なかには道ばたに野菜などを並べただけのものもあった。この近くに,植民地時代のイギリス風建築物が多く残っている。
動画2

●インド人家庭の訪問(家庭料理の調理) 動画3
 チェンナイ郊外のインド人のご家庭を訪問して,南インドの家庭料理をつくってもらった。南インドでカレーに添えて食べられている,ドーサのつくり方を見せてもらう。まず米と豆を2時間水に浸した後,ココナッツオイルなどを加えてミキサーにかける。それをねかせて発酵させた白いペーストをフライパンに薄くのばし,オイルをかけながらクレープのように焼きあげる。最近はドーサのもととなるインスタントの粉も売られていて,時間がない人はこの粉に水とヨーグルトを混ぜてつくっているという。
 焼きたてのドーサは香ばしく,そのまま食べてもおいしいが,やはりカレーと一緒に食べるほうが格段においしかった。料理はどれも調理にひじょうに時間がかかるもので,私たちがその行程がわかるよう料理のさまざまな段階を用意してくれていた。温かなもてなしに,楽しいひとときを過ごした。
動画3

●カーンチープラム付近の絹織物工房 動画4
 チェンナイから80kmほど離れたカーンチープラムの郊外に,絹織物をつくる工房が集まる村があり,伝統的な手織りの工房を見学した。1人目の職人は金糸の柄を織り込むための複雑な糸の操作がすべて頭に入っているということで,手で糸を微妙に調節しながら織り込んでいた。その方法が目に見えるもので残されていないため,彼以外はこの柄を織ることはできないらしい。一方2人目の職人はもう少し近代的で,糸の動きを調節して柄を織り上げるための穴のあいた型紙を織機に取り付けていた。この型紙を使用すれば作業も早く,誰でも柄を再現できるという。
動画4
南インド地図