〈帝国書院 取材班〉
 2015年9月,帝国書院取材班はロシアのサンクトペテルブルク,モスクワ,ヴォルゴグラードを訪れ,ロシアの産業動向や人々の生活のようすを取材した。今回はその一端を動画を交えて紹介したい。


 
 ジマさん一家の食事風景    瓶やタッパーで保存されているピクルス

●サンクトペテルブルクの家族の食事風景

 最初に紹介するのは,ロシアの一般家庭のようすである。訪れたのはサンクトペテルブルク郊外のアパートに暮らすジマさん一家。ご主人のジマさんは靴のチェーン店の店長をしていて,お子さんは2人というごく一般的な家庭である。日本のマンションと同じくらいの広さの2LDKのお宅で,長男のエゴーくん用の子ども部屋(動画冒頭00:11),長女と両親の寝室,ダイニングキッチンという間取りであった。ジマさんのお宅訪問の主目的は食事風景の撮影である。動画で確認できるものを順に紹介すると,まず皆が食べているものがロシアを代表するスープ,ボルシチである。ビーツという根菜を使うことでさわやかな赤色になり,肉や野菜が入っている。クルクルと混ぜているのは,サワークリームを入れているため。ロシアの人々の多くはボルシチにこれを入れて食べる。手前に見えるブリヌイは,ロシア版のクレープである。サラダなどさまざまなものを巻いて食べる。続いて登場するヴィニグレートはビーツを使った赤いサラダ。ニシンの塩漬け,トマトやきゅうりなどの酢漬けであるピクルスなど,ロシアならではの保存食も食卓に並んでいる。ビーツも家庭で使う実物を見せてもらった。動画最後(01:12)に登場するのがウォッカ。アルコール度数は40度ほどで,一気にのみほすのが流儀。この日はジマさんと乾杯を繰り返し,取材班も6杯ずつ杯を空けた。


●モスクワの日のイベント  
 モスクワでは,取材当日に大きなイベントが行われていた。モスクワ創建の日を祝い,毎年9月第1週目の週末に行われる「モスクワの日」である。この日はモスクワ各地でイベントが行われるが,メインストリートでは動画にあるように,中世ルーシ時代からロマノフ王朝時代,ソ連の時代までさまざまな時代のようすが再現され,多くの市民でにぎわっていた。赤の広場ではパレードも行われていたが,残念ながら入ることができなかった。動画最後(01:12)に登場するのは,ロシア市民の伝統的な踊りで,川の流れをイメージして流れるように動いていく。ロシア人の伝統衣装も見ることができる。


 
 取材した農場でいただいた昼食のようす   
冬小麦の種を種まき用の機械に入れているようす

●南部の大規模農業  
 取材班は,ロシア南部で行われている大規模農業も取材した。訪れたのはヴォルゴグラードから南西に160kmほどの場所にある大規模農場。ロシアではソ連の時代にコルホーズやソフホーズなどの集団農業が行われていたが,ソ連崩壊とともに農地は個人に分割されることとなった。この分割された農地で個人による農業に成功する農民も現れたが,個人では生計が立てられず,農地を売りに出す農民も現れた。そのようななか,この農場では,約600人の地権者の土地を集約し,130km2という広大な土地で小麦や大麦などの穀物栽培,牧草の生産と羊の放牧が行われていた。動画の冒頭は羊用の牧草の収穫風景。規模の大きさがわかると思うが,機械はソ連時代からの旧式。取材班が訪問した9月は,ちょうど春作物の収穫が終わる時期で,収穫後の農地には羊が放牧されていた。収穫後の穀物の切り株は,羊のえさとなる。牧羊犬に追われて移動する羊のようすは動画(00:38)のとおり圧巻であった。春作物の収穫が終わると,次は冬作物の作付けを行う。冬小麦の種まきのようすも撮影したが,地平線のかなたまで続く広大な農地への種まきは,大きな機械を導入してもいつ終わるとも知れない印象であった。一つ残念であったのは,この農場の土壌である。取材班は肥沃なチェルノーゼムの黒土地帯をイメージして訪れたのだが,この農場が位置している地域は,黒土地帯よりもやや南で,土壌はさらさらとした乾燥土壌であった。


 
注水のため扉を閉めるヴォルガ・ドン運河の閘門
 
取材班(帽子をかぶっている4人。モスクワの日のイベントにて)
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図1 平成28年度版『新詳高等地図』p.59 ヴォルガ川のダム湖(赤で囲った部分)

●ヴォルガ川とヴォルガ・ドン運河 
 最後に紹介するのは,ヴォルガ川とヴォルガ・ドン運河である。ヴォルガ川はモスクワ北部を源流にもつヨーロッパ最長河川で,カスピ海までロシア西部の主要都市を結びながら流れている。その重要度から,ロシアでは「母なる川」ともよばれている。動画冒頭はそのヴォルガ川のヴォルゴグラード付近の映像である。大河川であること,その西岸にヴォルゴグラードの町が広がっていることがわかると思うが,実はこの川の本当の大きさはこのあたりではわからない。というのも,町の北部に川をせき止める大きなダムがあり,その上流が地図帳のロシア全域を見渡せる地図でも確認できるほど巨大なダム湖になっているからである(図1)。このヴォルガ川と黒海へと流れるドン川を結ぶ運河がヴォルガ・ドン運河である。この運河があるおかげで,モスクワからヴォルゴグラード,さらには黒海,地中海へと移動が可能になっている。映像は,そのヴォルガ川からの第一閘門である。閘門を閉めてから注水が完了するまで時間がかかるため,途中で50倍速にしている。ドン川方面の水面が高く,閘門で水位調整しているようすがおわかりいただけるかと思う。

 以上,今回の取材内容を映像にて簡単に紹介させていただいたが,取材成果は今後,教科書や副教材,ウェブサイト,『地理・地図資料』等の資料で発信予定である。取材班が肌で感じたロシアの現在の姿が少しでも伝われば幸いである。

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