〈帝国書院 取材班〉

 2011年9月,取材班4人は地理教材写真の撮影のため,イタリアとスロベニアへ向けて旅立った。14日間の旅程のなかで,セスナによる航空撮影はハイライトである。航空撮影は天候によって成否が左右されるため,われわれはその日が晴れることを祈りつつ過ごした。われわれの祈りが通じたのか,当日は好天に恵まれた。
 一般に,航空撮影ではヘリコプターの方が写真を撮るのに向いているとされるが,予算や先方の都合等でセスナを手配してあった。しかし,このセスナはパイロットも含めて4人乗りだったため,そのままでは取材班のだれか1人が乗ることのできない状況だ。現地で交渉した結果,2時間のフライトを1回行う予定から,1時間のフライトを2回行うことに変更することができた。これで,交代しながら全員がセスナに乗って取材できるようになった。
 早速,駐機場に向かうと,われわれが乗り込むセスナが人力で引き出されて格納庫から現れた(写真①)。ここに来るまでは全員が搭乗したいと願ったセスナだったが,小さく頼りない機体を見た途端に「本当にこんなのに乗って大丈夫?」と不安を覚えた。パイロットに促されて乗り込むと,想像どおり中も非常に狭い(写真②)。私はパイロットと会話をするためのトランシーバーを装着した。留意事項の確認を終えると,パイロットはエンジンをおもむろに始動,猛スピードで滑走路の端に向かう。われわれが乗り込んだセスナは,ここからエンジン全開で大空へ舞い上がっていった(movie①)。
 上空では,大声を出さなければ会話ができないほどエンジン音と風切り音がうるさかった。英語力が十分でないことに加えてトランシーバーの雑音もひどいために,パイロットが何を言っているのか十分に理解できない時もあったが,ジェスチャーや眼力も交えながら,意志の疎通を図って乗りきった。
 撮影時には,カメラ係はセスナの小窓を開け,カメラをしっかりと握った腕を外に出す。そして,ファインダーを覗きこんで,シャッターを切る。この時,パイロットは小窓を開けた側を下に向けるために,機体を傾けて旋回する。小窓を開けているために気流が乱れてセスナは上下左右に揺れ,旋回しているために強い横Gも発生するため,撮影の姿勢を保つのがとても難しい。こうした過酷な状況のなか,カメラ係はシャッターを押し続けたのであった。
 上空からカルスト地方の大地を眺めると,大小さまざまな窪地を見ることができた(写真③,④,⑤)。飛行中は「あれは地理で習ったドリーネ?それともウバーレ?」など,大声による問答が尽きなかった。また,飛行場に来る前に訪れたシュコツィアン洞窟(写真⑥,movie②)や前日に立ち寄った洞窟城(写真⑦,⑧),丘の上にあるシュタニエルの村(movie③,写真⑨)を上空から眺めた時には,地形や建物の美しさに感動を覚えた。
 こうして,われわれは無事に取材を終えることができた。取材の成果は,地理の資料集「新詳地理資料COMPLETE 2012」等に採用された。なお,「地理・地図資料2012年1学期①号」や,弊社ホームページ「 写真館」にも取材記や写真が掲載されているのでご覧いただきたい。

 
 
格納庫から出てきたセスナ   出発

急上昇するセスナ
 
カルスト台地の景色   カルスト台地の景色
 
カルスト台地の景色   シュコツィアン洞窟

シュコツィアン洞窟
 
洞窟城   取材班(洞窟城の前で)

シュタニエルの村
   
シュタニエルの村