〈帝国書院 取材班〉
   
フリンダースストリート駅
  ヤラバレーのワイナリー   肉牛の飼育農場

  2012年10月,私たち取材班の3人はオーストラリア南東に位置するメルボルンの産業や歴史・文化を取材するため,メルボルン空港に降り立った。ニュージーランドの取材を終えてからの入国だったため,高層ビルや何車線もある高速道路を目にして「大都会」という印象をもった。実際メルボルンは人口413万を擁するオーストラリア第2の都市でヴィクトリア州の州都でもある。キャンベラが建設されるまでは首都でもあり,イギリス統治時代の面影と近代的な街並みが調和した美しい街である。F1のオーストラリアグランプリやテニスの全豪オープンも開催されるなど,芸術・文化の中心地となっている。
 写真①はメルボルンのアイコン的存在である,フリンダースストリート駅である。メルボルンと近郊を結ぶ中距離列車が発着するこの駅は,宮崎駿監督の映画『魔女の宅急便』に出てくる時計台のモデルになったともいわれている。後方の高層ビルは,サウスバンク再開発地区のユーカレタワーで,南半球一の高さを誇る高層居住用ビルである。市内は多民族国家らしく,白人以外にもアジア系,インド系などさまざまな人たちの姿が見え,中華街,ベトナム人街,ギリシャ人街,イタリア人街などがある。昼食はギリシャ人街のレストランでチーズがかかった挽肉と豆の炒め煮をいただいたが,ハーブが効いたエスニックな味付けでおいしかった。
 写真②はメルボルン市内から北東へ40kmほどのところにある,ヤラバレーのワイナリーである。オーストラリアアルプス山脈のすそ野に位置する丘陵地帯にぶどう畑が広がり,オーストラリアワインの主要生産地となっている。世界的な高級ブランドのワイナリーもあり,品質的にもすぐれたワインを生産し評価を得ている。試飲で白をいただいたが,フルーティーで甘く,みずみずしいぶどうの香りがした。
 写真③は,オージービーフとして日本へも多く輸出されている,肉牛の飼育農場である。オーストラリア内陸の乾燥地域では粗放的な放牧が行われているが,都市近郊のここではアンガス牛の集約的飼育が行われている。人工授精で繁殖させたり,牧草が少ない時期には穀物飼料も与えたりするなど,品質にこだわり肥育している。育てた牛はオークションにかけられ売られていく。こちらの牧場では,日本人に売ることもあるが,最近はロシア人に売ることが増えているという。また,霜降り肉の和牛を肥育している牧場もあり,メルボルン市内のレストランでは「WAGYU」としてメニューにもあるなど,人気を得ていた。
 写真④はメルボルン近郊の畑である。カリフラワーやにんじんなどの野菜や,キャノーラ油にする菜の花が多く栽培されていた。野菜や果実の近郊農業がさかんで,写真⑤のヴィクトリアマーケットをはじめ市内で売られ,市民の食卓をいろどっている。
 写真⑥は,メルボルンから東へ100kmほど離れた場所に位置する,モーウェル近郊のロイヤン火力発電所と露天掘りの炭鉱である。付近のラトローブ・バレー一帯には多くの炭鉱が分布し,ビジターセンターやビューポイントも整備されている(写真⑦)。石炭などの資源に恵まれたオーストラリアでは電力の9割以上を火力発電でまかなっており,ここで産出される石炭は褐色炭で品質は劣るものの,産出された石炭はすぐに隣の火力発電所に運ばれ二次エネルギーの電力となりメルボルンに供給される。石炭の輸送コストがかからず,電力の送電コストも少なくてすむという立地を生かした発電所である。炭鉱の手前では良質な毛がとれる羊,メリノ種の放牧も見られた。なお,2014年2月にすぐ近くのヘーゼルウッド炭鉱で大規模な火災が発生し,近隣住民に健康被害が出ている。オーストラリアでは高温乾燥から山火事が起こることも多く,道路脇のいたるところに山火事の危険度を示した看板が設置されて注意を促している(写真⑧)。
  今回は日程の都合でメルボルン周辺のみの取材となったが,豊かな資源を生かした産業と,さまざまな人々を受け入れてきた大陸的でおおらかな多文化主義のオーストラリアを実感することができた取材となった。

 
  メルボルン近郊の畑
 
  ヴィクトリアマーケット
 
  ロイヤン火力発電所と露天掘りの炭鉱
 
  取材班(ビューポイントにて)
山火事の危険度を示した看板